多くの企業で売上の実績や上司の評価、経営者との関係などがキーとなることが一般的です。
しかし当時私が働いていた家電量販店では出世する人はこの1点に尽きます。
「どこにでも転勤ができるか」
という点が特に重要視されていました。
売上の高い社員や、上司のお気に入りとなる技巧を持つ者が出世することはあるものの、主な決定要因は
「遠方への転勤が可能か」でした。
そのため、店長の役職にあるからといって、必ずしも接客スキルが高いわけではなく、商品に関する深い知識を持っているとは限りませんでした。
私自身は10年間で4度の転勤を経験し、4度目の遠方転勤時に主任に昇進。
その後、同じ店舗で次長の地位に就いたという経緯があります。
周りと比べ遅咲きでしたが、その分売り場にいた経験が長いため商品知識は豊富です。
家電量販店での昇進: 転勤の役割とその影響
出世の道は、遠方への転勤が可能かどうかに大きく左右されます。
これは、企業の方針に迅速に対応する柔軟性を持つ人材を評価する背景があるからです。
特に、家電量販店が全国に急速に拡大していた時期には、新しい店舗が次々とオープンしており、私が所属していた企業も例外ではなく、この全国展開の波に乗っていました。
昇進のステップは、一般社員から始まり、主任、次長、店長、そしてエリアマネージャーへと続いていて、主任までの昇進は経験年数と実績によっても可能でしたが、次長以上になるには遠方への転勤の経験が不可欠でした。
その結果、頻繁に転勤を経験してスピード昇進した店長たちは、実際の現場の状況を十分に把握していない場合が多かったのです。
企業の昇進と実力: 役職と能力のギャップ
高い役職に就いているからといって、必ずしもその人が仕事のエキスパートであるとは限りません。
多くの企業で、出世しているにも関わらず実力に疑問符がつく人物が存在します。
私の経験からも、このような現象は確認できました。
主な原因として人事部と店長が中心となり、数字だけで人事評価を行い、現場の意見やフィードバックを十分に取り入れないことが挙げられます。
店長が転勤する際に、優秀な社員を大量に引き連れるような事例も当たり前のように存在します。
しかし、企業の中には少数ですがパートを含めた会社の土台を支えてくれている一般の従業員を良くみている元スターバックスCEOの岩田松雄氏や、人を重視して社長自らが自社製品を楽しむブロンコビリーのような企業は業績が好調な傾向にあります。
一方で、主任レベルの社員は現場の実態をよく理解しているため、お客様からの評価も高いです。
しかし、店長に昇進すると、事務作業が増え、現場から遠ざかる傾向があります。
そのため、店長を指名して接客を依頼するお客様もいますが、商品知識やサービスに関する詳細を求める場合、主任クラスの社員の方が適切なアドバイスを提供できるでしょう。
価格交渉の際には店長の介入が有効ですが、接客をした社員にとってはお会計の最後まで話を聞いてくれたお客様の方が印象は良くなります。
一度しか利用しないなら良いのですが、その店舗に何度も足を運ぶ可能性があるなら継続的な関係を築くことをお勧めします。
なぜなら良い関係を築ければ、お客様は店員からの信頼性の高い情報提供や特別なサービスを受けることが期待できるからです。
このようなアプローチは、顧客と店員の長期的な信頼とロイヤルティ(愛着)を確保する上で非常に有効です。
転勤のメリット: 経済的利点と新しい発見
転勤は、新しい場所への移住を意味し、それに伴い新しい住居の確保や家電の購入などの初期費用が発生します。
しかし、私が所属していた会社では、家賃の全額を補助してくれたため、生活費は食費や光熱費のみとなり、大部分を貯蓄に回すことができました。
仕事が忙しく、たまに飲みに行ったり、インドア生活でお金の使い道があまり無かったという理由もあります。
そして新しい土地での生活は、未知の発見や経験をもたらします。
同じ日本と言えどその土地の食べ物や風習、言語など、TVで見るのと実際に体験するのではやはり大きな違いがあります。
様々な人との出会いも、大きな人生の転機になる事も珍しくありません。
私の場合、素晴らしい同僚に恵まれ、転勤の経験をポジティブに捉えることができました。
もちろん、会社や環境によっては家賃補助が部分的であったり、人間関係の課題が生じることも考えられます。
ですが、これらの経験を人生の貴重な1ページとして受け入れることで、新しい視点や成長を得ることができるでしょう。
まとめ
転勤は多くの人にとって大きな決断を伴うものですが、その背後には意外なメリットが隠れています。
新しい土地での生活は初期費用がかかるものの、会社の補助により経済的な利益を享受することができる場合も。
さらに、新しい環境での人間関係の形成は、人生の豊かさを増す要因となります。
特に家電量販店のような業界では、転勤がキャリアアップの鍵となることが多いです。
しかし、役職と実力のギャップや、人事評価の問題点も無視できません。
最終的に、転勤は個人の価値観や状況に応じて、そのメリット・デメリットを総合的に判断することが求められます。