裏話⑩未来の家電:便利さの追求と人間らしさの保持

裏話⑩未来の家電:便利さの追求と人間らしさの保持

現代社会の技術の進化には目を見張るものがあります。その中でも、私たちの日常を彩る家電は、その技術の進歩を如実に感じさせる存在となっています。

私は長い間、家電業界の動向を追い続けてきました。その経験をもとに、これからの家電の未来像を描き出してみたいと思います。

家電の未来には、私たちの生活をより豊かにする明るい展望が広がっていますが、一方で、新しい技術やトレンドに伴うリスクや課題も存在します。その両面をしっかりと捉え、どのような未来が待っているのかを探る旅に出かけましょう。

この記事を通して、家電の未来に関心を持つ方々と共に、その魅力と課題を深く掘り下げていきたいと思います。最後まで、どうぞお付き合いください。

対話型AIによる家電の技術革新

対話型AIと言って真っ先に思い浮かぶのはAIアシスタント技術を搭載したApple SiriGoogleアシスタント、Amazon AlexaMicrosoft Cortanaなどではないでしょうか?

2017年頃Alexaなどのスマートスピーカーが発売された当初は人間の技術力はここまできたか、と驚かされたものです。

画面を操作しなくても音楽の再生、ニュース、天気予報、交通や電車の運行状況の確認、リマインダー機能、カレンダーとの連携、買い物リストの作成などが声だけで使えるようになり、生活の幅が大きく変わりました。

そしてloT(モノ同士がネットで繋がる技術)が普及するや否や様々な家電と連携するようになりました。例えば照明のオン/オフ、玄関の鍵の開け閉め、外出先からエアコンの操作などが出来るようになり、外出した後、鍵のかけ忘れや照明の消し忘れを心配したり、帰宅する前にエアコンを操作して快適な温度にしておく、といったことが可能になりました。

しかし、そうはいってもスマートスピーカーは機械的な反応であり、出来ることは限られていてすべての事象に対して答えてくれるわけではありません。

では次の項目で最新の対話型AI(ChatGPTなど)がどのようなことが出来るのかを具体的に見ていきましょう。

未来のコミュニケーション: スマートスピーカーと対話型AI(ChatGPTなど)の融合

対話型AI(ChatGPTなど)の能力

  • 膨大な知識ベース:CHATGPTは、数千冊の本や、インターネット上の情報を持っており、あらゆるトピックに関する質問に答えることができます。
  • 文化的ニュアンスの理解:さまざまな文化や背景からのユーザーとのコミュニケーションをサポートするための知識を持っています。
  • クリエイティブな思考:ユーザーの要求に応じて、詩や物語、歌の歌詞などをオリジナルで生成することができます。
  • 感情の理解:ユーザーの文章から感情を読み取り、それに応じた返答をすることができます。
  • シミュレーション:仮定やシナリオに基づいて、未来の出来事や結果をシミュレートすることができます。
  • データの解析:複雑なデータセットを解析し、その結果を簡潔に要約することができます。
  • 自然言語の深い理解:言葉の背後にある意味やコンテキストを理解し、それに基づいて適切な返答をすることができます。

これらはほんの1例ですが、簡単に言えば人間以上に膨大なデータを詰め込み、それを基に今までできなかった様々なことが出来るようになりました。あくまでも膨大なインプットから出るアウトプットで感情が宿ったように会話が出来ても中身は機械に変わりはありません。

スマートスピーカーとChatGPTなどの対話型AIを組み合わせる事で何でも出来るようになる、とはいいませんがそれに近い事が出来るようになると思われます。

対話型AIでは基本的にこちらの会話をほとんど理解することが出来ます。

ですから簡単な話、インプットはいくらでも出来るわけですから膨大な情報を詰め込み、あとはアウトプットする技術を開発するだけで無限に出来ることが増えていきます。例えば自分の頭の中に思い描いたある「何か」を作りたい、といえば何の材料が必要か、代替えできるのもはあるか、設計図はこういう感じで良いか、などを瞬時に判断して提案してくれるようになります。そこでその材料の情報をスマートスピーカーから企業側に渡して、その「何か」を作ってくれるサービスが出来る未来はそう遠くないかもしれません。

他にも栄養素とカロリーを考慮した上で1週間分の料理を提案して、といえば食材から調味料、調理方法まで事細かく教えてくれるようになるでしょう。更に未来の調理家電と連携すれば材料を入れてボタン一つで料理が出来て、自分に合った味付けにも変更可能になり、余った食材の保存方法や賞味期限なども教えてくれるようになるでしょう。

ようするに、こちらが提案したものすべてに、実現可能な範囲で答えてくれるようになる、と言うことです。

そしてその答えが蓄積され、実現してくれる技術開発が進めば進むほど、一個人が出来る範囲が広がっていき、それにともない大きな技術革新が進んでいくでしょう。今までは資金力のある企業がさまざまな物を作ってきましたが、それが個人でも可能になり、これによって進化のスピードは飛躍的に上がるようになるはずです。

未来の冷蔵庫

現代の冷蔵庫は主に冷蔵室、野菜室、冷凍室の3つの区画に分かれています。

未来の冷蔵室は、日常的に使用する調味料や飲料、短期間で消費する食品を中心に収納するスペースとなるでしょう。一方、野菜室は、野菜や果物が放出するエチレンガスを管理し、腐敗を防ぐ技術が進化。さらに、各食材の最適な熟度や保存期限を自動で検知し、ユーザーに通知する機能が搭載されると予想。冷凍室においては、魚や肉などの食材を鮮度を損なわずに急速冷凍する技術が一般家庭にも普及。また、専用の解凍スペースが新たに設けられ、効率的な食材の管理と使用が可能になることが期待されます。

現在でも業務用の大型機械では液体窒素(-196℃)を使用して食品を瞬時に冷凍する技術が実用化されています。この技術により食品の品質を維持しつつ、長期保存が可能となっています。しかし、液体窒素はコストがかかるのと危険性が伴うので家庭で使用するにはさまざまな課題があります。

そこで液体窒素の代わりになる物質がドライアイス(ー79℃)です。ドライアイスの作り方は単純で、二酸化炭素(Co2)を高圧下に置き、その後圧力を下げることで、気化熱によりCo2が急激に冷やされて固まることで作られます。しかし、作り方は単純でも実用可能にするとなるとハードルは一気に上がります。それでも今後の技術革新により、ドライアイスが冷凍庫内で作ることが可能になれば液体窒素より安全に利用できます。ドライアイスは氷と違い、個体から一気に気体になる(液体にはならず汚れない)ので利便性も高いのです。

空気の中には酸素が約20%、窒素が約80%、そして二酸化炭素が約0.04%含まれています。将来的には技術の進化により、冷蔵庫がこれらの成分を直接取り込み、ドライアイスや液体窒素を生成することが可能になるかもしれません。その際、安全面の向上も期待されます。

また、環境問題としてCo2の排出量が注目されていますが、実は空気中のCo2は0.04%しかありません。過去の地球の歴史を見ると、恐竜がいた約1億5000万年前の白亜紀ではCo2の濃度は現在よりも5倍以上も高かったと言われています。Co2は植物(海中の植物プランクトン含む)の成長に必要な栄養素かつ酸素に変換されます。環境問題に取り組む際もCo2が完全に悪いと錯覚しがちですが、全体のバランスを考慮することが大切です。そうでなければCo2が減少することで更なる問題が浮上する可能性があるからです。

未来の洗濯機

現代の最先端の洗濯機は、洗剤の投入から洗濯、乾燥までを一貫して自動化しています。しかしながら、頻繁に洗濯することでの衣類の劣化は避けられません。多くの場合、目視での汚れの判断は難しいものです。未来の洗濯機は、衣類に付着した見えない汚れ、例えば皮脂や花粉をセンサーで検出し、その汚れの度合いに基づいて最適な洗浄方法を提案したり、洗濯不要と判断する機能を持つことも考えられます。

さらにドライクリーニングウェットクリーニングなど、特殊な溶剤や洗剤を使用した洗濯が可能となり、プロのクリーニング店に頼ることなく、家で高品質な洗濯が実現する未来もそう遠くないかもしれません。しかし、技術の進化とともに、汚れに強い新しい素材の衣類が開発され、それに特化した洗濯機が市場に登場する可能性もあります。

未来のTV

現代のVR技術は360度の仮想空間を体験できるゴーグルを通じて、まるで別の世界に足を踏み入れたかのような没入感が得られます。

未来のテレビは、部屋全体を取り囲むようなプロジェクター技術で、視聴者を完全にその映像の中に引き込むかのような体験をもたらすでしょう。

さらに進化した未来では、ヘルメットやキャップのようなデバイスを通じて、脳に直接シグナルを送り、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感全てを刺激する映像体験が実現するかもしれません。これは、映画「マトリックス」のような完全な仮想現実の世界を体験することを意味します。

しかし、このような技術の進化には注意が必要です。現実と仮想の境界が曖昧になると、人々は仮想の世界に依存するリスクが高まります。そのため、特定の資格や許可が必要となるかもしれません。仮想現実の魅力に取り憑かれ、現実を忘れる人々が増えると、人類全体の未来に影響を及ぼす可能性があります。現代のスマートフォン依存の問題を考えると、その兆候はすでに見え始めているといっても過言ではありません。

未来のスマートフォン(携帯電話)

民間用の携帯電話の始まりは、1979年に日本電信電話公社が世界で初めてサービスを開始した自動車電話です。1987年、NTTから日本初の携帯電話サービスが開始。そして2007年の初代iPhoneを経由して、登場から半世紀も経っていないのに携帯電話は目覚ましい進化を遂げてきました。

未来のスマートフォンは、映画のような未来的なデバイスとして、スマートウォッチやアクセサリーみたいに私たちの身体に直接取り付ける形が考えられます。使いたい時には手のひらや空間に直接ホログラフィック映像を投影し、操作が可能になるかも知れません。通話や音楽の再生のみならず、様々な電化製品と連動して常時装着できる環境音のオンオフ機能を持った超小型ワイヤレスイヤホンが活用される可能性が高いです。

セキュリティ面ではパスワードの代わりに声紋認証(肉声)が主流になる可能性も考えられます。指紋と同じように誰一人として同一の存在が無い個人の独特な声の特徴を利用し、特定の言語を発してデバイスのロックを解除する方法が一般的になる未来もそう遠くないのかも知れません。

更に将来的には、スマートフォンの機能を持ったチップやデバイスを体内に埋め込む未来が来ることも考えられます。これにより、身体の一部として常に情報にアクセスする時代が到来するかも知れません。

充電の問題もマイクロ波方式を利用した遠隔充電技術を利用して、どこにいてもデバイスの充電ができる環境になってくると思われます。

今後もスマートフォンは形を変えながら、個人認証、決済、通話、情報交換などの機能を提供する主要な通信ツールとして、私たちの日常生活に不可欠な役割を果たし続けるでしょう。

進化の中で「人間らしさ」を守る未来への願い

いくつか未来の家電の話をしてきましたが、必ずしも記事の内容通りの未来になるとは限らないでしょう。

しかし、内容はどうあれ行き着く先は利便性の追求に他なりません。

家電を筆頭に利便性を追い求めた結果、私たちはいったいどこへ向かうのでしょうか。

人間の価値とは便利で楽な生活が出来る中に生まれるものでしょうか。

私が思う人間としての最も大切な価値は、「人間らしさ」だと思います。

もし私たちがこれからもただ機械の力に身を任せ、技術の進歩ばかりを追い求めるのなら、いつかはその「人間らしさ」を失ってしまうかもしれません。

人間らしさ」とは、私たち一人一人が持つ独自の個性と、限りある命をお互いが尊重し、大切に想うこと。そしてその想いを次世代に受け継ぎ、この世の真理を紐解いていくことだと考えます。

人間らしさを維持するためには顔を合わせての会話で意思疎通を行い、時には笑い、ケンカもして人間関係を強固なものにしていくことが必要不可欠です。痛みや苦しみを感じるからこそ健康のありがたさを知り、他者への優しさを実践できる。そして、限られた寿命の中で「今」を大切にし、命の尊さを深く感じることができるのが、私たち人間なのではないでしょうか。

私たちが今を幸せに感じているなら、誰しも死にたくない、と思うのは当然です。もし不老不死が手の届くものとなれば、多くの人がそれを選ぶでしょう。極端な話、そのためには私たちの体のすべてを機械に置き換えたり、遺伝子を操作して同一人物を何度でも作り出すことも考えられます。そうなれば、人間としての繁殖の必要性はなくなり、人口が減少しても苦も無く同じ人間を再び作り出せる時代が来るかもしれません。しかし、それは真に私たちが求める未来なのか、一人一人がよくよく考えなければならないことだと思います。

私たち人類がこれまでに創り上げてきた物語は「人間らしさ」の結晶です。小説やドラマ、アニメ、漫画、そしてフィクションやノンフィクションにいたるまで、私たちが心を動かされ、涙を流してきたのは、その中に宿る「人間らしさ」の魅力と感情ゆえです。

効率だけを追い求め「人間らしさ」を失った存在は、もはや人とは言えないのかもしれません。

私たち人間は単独の存在としてではなく、コミュニティを形成する一つの集合体として生きています。もし集合体としての私たちが利便性を極限まで追求した結果、永遠の命を欲する道を選ぶなら、その選択の結果を受け入れるしかないのかもしれません。

未来の姿はまだ見えず、確定的なことは言えませんが、どのような進化をたどるとしても、私たち人類特有の「人間らしさ」を失わずに、それを保ちながら成長していくことを切に願っています。