当時、携帯電話など、ほとんどの家電が日本製で海外製品はあまり売れませんでした。
今から約20年前の西暦2000年前後(平成10年前後)、日本の家電量販店はまさに黄金時代を迎えていました。
この時代を振り返ると、まだまだネット販売の影が薄く、人々は店頭での購入を好んでいました。
日本製(メイドインジャパン)の製品はその品質と耐久性で高く評価され、他国の製品は短命であるとの印象が強かったのです。
メイドインジャパンの誇り
家電製品の全盛期とも言えるこの時代、ジャパンアズナンバーワンのフレーズがふさわしい時代でした。
新聞の折込チラシは、特に家電量販店にとっての主要な宣伝手段であり、多くの消費者が店頭に足を運びました。
特に、台数限定の1円パソコンなどの目玉商品を筆頭に、各家電量販店がチラシ戦争を勃発させ、しのぎを削っていました。
実際に並んでいる人に聞いたわけではないですが、上司の話では首が回らなくなった債務者や転売する人、ホームレスの人が賃金をもらい誰かに頼まれて並んでいたなど、さまざまな事情があったようです。
こういう人たちは生活がかかっているため、数日前から泊まり込みで並んでいました。
このような大胆なセールス戦略は現在では法律で規制されていますが、当時チラシ初日の金曜日には毎週のように長蛇の列ができるほどの人気でした。
家電量販店と闇金との闘い
しかし、この繁栄の裏には、闇金業者や債務者との闘いがありました。
当時の上司の話によれば、一部のお客様は闇金の債務者であり、返済のためにパソコンなどの高額な商品をローンで購入し、それを闇金業者に手渡していたとのこと。
自分の名義ではローンの審査が通りにくいため、一部の人は偽の身分証を使用してローンを組むこともあったと言います。
そのため、店員は接客時に様々な手段を駆使して、このような疑わしい客を見抜く必要がありました。
実際に私が接客したお客様の中にも、商品説明も無くこれ下さい、と特定の高額商品に固執するお客様がおりました。
そういう人はたいてい挙動不審で闇金業者から特定の機種を指定されていた可能性が高く、その動きは非常に予測しやすかったのを覚えています。
ローン会社もこの状況を認識しており、審査が通った後で入金されませんでした、では後の祭りです。
高額商品の購入に際しては審査が非常に厳しかった時期でした。
そのため、不審なお客様は多くの場合、審査が通りません。
しかし、中には疑念を抱きつつもローンが承認されるケースもありました。
どちらの結果になっても、債務者にとっては厳しい状況であったことは確かです。
黄金時代の終焉とその背景
かつて、日本の家電ブランドは世界を席巻していました。
しかし、時代の流れとともに、中国や韓国のブランドがその地位を脅かす存在となりました。
特に注目すべきは、日本の名だたる家電メーカーが次々と海外企業の傘下に入る動きです。
中国家電の驚異的な進化
1978年の改革開放以降、中国家電は目覚ましい成長を遂げています。
特に2000年代は、グローバル展開が加速。
中国の都市部では早くも1985年から1990年にかけて、洗濯機やカラーテレビが家庭に普及。
一方、農村部では2000年代にその波が到達しました。
2000年代半ば、ハイアールやマイディアといった中国家電メーカーが世界市場でのシェアを急拡大。
特にハイアールは、世界の家電売上高ランキングで常に上位に名を連ねています。
日本の家電メーカーが中国企業に買収された背景
- 中国の経済力の台頭
2000年代初頭から、中国の経済は急成長。多くの企業がグローバル展開を果たし、海外の有望な企業やブランドの買収にも資金力を持つようになりました。
- 日本家電市場の変遷
日本国内の家電市場は、人口減少や成熟市場の影響で縮小。新しい成長の機会を求める中で、中国企業との提携や買収が増えてきました。
- 激化する家電市場の競争
韓国や中国の家電メーカーが価格競争力や技術革新で市場シェアを拡大。日本の家電メーカーは、これに対抗するための新たな戦略を模索しました。
- 事業再編の波
経営資源の最適化や非中核事業の整理を目的とし、一部事業の売却が進められました。この際、中国企業が買収の主体となるケースが増えてきました。
- 技術とブランドの継承
中国企業は、日本の技術やブランド力を高く評価。これを自社の成長やブランドイメージの向上に活用することを目指しました。
- 中国市場へのアクセス強化
中国は巨大な家電市場を持つ国。日本の家電メーカーとの提携や買収を通じて、中国市場へのアクセスを強化する動きが見られました。
日本の家電メーカーの今後の課題
- 国際競争の激化
中国や韓国などのアジア諸国の家電メーカーが技術力や価格競争力を強化してきており、グローバル市場での競争が激化しています。日本のメーカーは、これらの国々との差別化を図る必要があります。
- 技術革新のスピード
IoT(様々な物がインターネットに繋がる仕組み)、AI、5Gなどの新技術の導入が急速に進んでおり、これらの技術を取り入れた製品の開発が求められています。適応速度が求められる中、継続的な研究開発投資と技術革新が不可欠です。
- 消費者ニーズの多様化
消費者のライフスタイルや価値観が多様化してきており、個別のニーズに応える製品やサービスの提供が求められています。カスタマイズやパーソナライゼーション(個人化)がキーワードとなるでしょう。
- サステナビリティ(持続可能性)の重視
環境問題やサステナビリティが社会的な課題として注目されており、エコフレンドリーな製品やリサイクルを重視した製品設計が求められています。
- 新しいビジネスモデルの模索
製品だけでなく、サービスやソリューション(解決・解答)の提供を通じての収益拡大が求められています。例えば、家電製品と連携したサブスクリプション(継続購入)サービスや、データを活用した新しいビジネスモデルの開発がキーとなるでしょう。
- 生産・供給チェーンの最適化
国際的な貿易摩擦やパンデミックなどの影響で、生産や供給チェーンに影響が出ています。リスクを分散させるための多角的な生産体制や、効率的な供給チェーンの構築が求められています。
- ブランド力の強化
グローバル市場での差別化を図るためには、ブランド力の強化が不可欠です。高品質や独自性を持った製品を提供し、信頼性やブランドイメージを高める取り組みが必要です。
これらの課題を乗り越え、日本の家電メーカーが再び世界のトップブランドとしての地位を築くためには、継続的な技術革新や市場ニーズのキャッチアップ、そして新しいビジネスモデルの模索が不可欠です。
参考資料:財務総合政策研究所
財務総研スタッフ・レポート
中国家電メーカーの躍進と日本の家電メーカーの今後の課題
日本家電の変遷と中国家電の新時代: 何を学ぶか
家電市場は絶えず変化し、新しい風が吹き込むことで、新しい時代が築かれてきました。
日本の家電はその変遷を経て、今日の地位を築き上げました。
一方、中国家電は新しい時代を迎えています。
メイドインジャパンからメイドインチャイナに変わったこの20年。
この歴史の中で、私たちはどのような教訓を得ることができるのでしょうか。
昔の良さを懐かしむだけではなく、日本の未来を考えよう
「昔は良かった」という考えだけで終わらせることは、新しい挑戦から逃げることと同じです。
私たちは先人たちの情熱と努力を学び、常に前進する意志を持つ必要があります。
約20年前、日本の家電は戦後復興から多くの挑戦を乗り越えて繁栄を迎えました。
その成功の背後には、日本製品の高品質と消費者の信頼がありました。
この信頼を取り戻すには他国に依存せず、自国で生産できるような経済力と技術力が必要不可欠です。
先人たちが培ってきた想いを繋ぐため、一人一人が日本の未来を考えて、行動に移していきたいですね。
読者の皆様へ
この記事を通して、約20年前の日本の家電の魅力と挑戦を感じていただけたら幸いです。
私自身、その時代を知る者として、これは忘れられない思い出です。
家電市場の変遷は、私たちに多くの教訓を与えてくれます。
過去の成功と失敗を学び、未来に向けての新しいステップを踏み出しましょう。